道行き




１８




　赤毛に、眼鏡。三人と同じそばかす顔。右腕には大きな紙袋を二つ抱えている。
「パーシー！」
「パース…」
　ロンは嬉しそうに、双子はうんざりした顔つきで、そいつの名を呼んだ。なんてことだ。ウイーズリー家勢揃いじゃないかぁ！
「学校外での魔法は禁止だ。馬鹿者共」
　言葉と同時に、彼の左手は素早く双子の頭を叩いていた。
「この列車は、ホグワーツ専用だぜ？無関係な奴は乗ってないよ。なぁ？」
「そうとも。ここはホグワーツの一部さ。石頭」
「結構、堅さは取り柄だ。鳥頭」
　大袈裟に頭をさすりながら文句を垂れる双子にも動じない。こいつが監督生の三男か。堅物そうだなぁ。
　呆然と見上げる子供らの視線に、戸惑いと緊張とを見て取ったのか、パーシーがうっすらと笑った。厳めしかった顔に優しい表情が出て、学校生活に熟達した監督生らしい風格が漂った。
「一年生諸君。ホグワーツへようこそ。ロンの兄、パーシーだ。不肖の弟だがよろしく頼む」
　凛と張りのある声。子供らは一様に頷いた。マルフォイを除いて。
「パーシーもハリーを見に来たの？」
　ロンが問うた。
「不躾な奴だな。ほら」
　パーシーはぱんぱんにふくらんだ紙袋をひとつ、ロンの膝に投げた。はち切れそうなほどお菓子が詰まっていた。
「…パーシーも魔法使いだね」
「見習い中だ」
　弟の感嘆の呟きにも、顔色ひとつ変えない。
　パーシーはくるりとコンパートメントを見回し、ハリーに目を留めた。
「君がハリー・ポッターだね？」
　ハリーがこっくりと頷いた。
「「ハリー・ポッター」の名前は有名だ。おそらく珍獣扱いを受けることになるだろう。回りに踊らされず、自分を見失わず、考えて行動しなさい」
「なに？説教しに来たの？」
　うっとうしげにロンが顔を顰めた。
「列車中、その噂で持ちきりだ。気持ちは判らなくもないが。される君の方が迷惑しているのではないかと思ってね。ほら」
　そう言って、もう一つの包みを投げた。包みは、弧を描いてハリーの腕に収まった。こちらもお菓子でいっぱいだった。
「ホグワーツはお祭り好きなんだ。気にするな。すぐなじむさ」
「ありがとうございますっ」
　悪戯小僧のような笑顔で目配せし、すぐまたもとのしかつめらしい表情に戻ったパーシーに、ハリーが弾むように嬉しげな声で礼を言った。
「ロン。みんなで分けなさい。いいね？」
「は〜い」
「君は？」
　目があったのだろうか。パーシーが、ロンの隣の少女に問いかけた。
「グレンジャーです。ハーマイオニー＝グレンジャー」
「よろしく。ミス・グレンジャー」
「ネビルです。ネビル＝ロングボトムです」
「…グレゴリー＝ゴイルです」
「ビンセント＝クラッブです」
　パーシーの視線に応えて、順に名乗った。
「…マルフォイだ。ドラコ＝マルフォイ」
　年長者への緊張も尊敬も感じられない、抑揚のない声だった。
　ウィーズリー家の三人が揃って露骨に顔を顰めた。

　
続く


　
2002/03/17　UP
　
　

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